「所見」欄の簡素化についてお知らせ

平素より大変お世話になっております。本日が弊社の仕事始めにあたり、気持ちを引き締めてスタートしております。

さて、弊社は「病理検査」をする企業で、「診断」が商品となっております。今回は商品の仕様の若干の変更についてお知らせ申し上げます。

弊社では病理標本(プレパラート)作製の外注化を起業当初から実施し、得た時間を用いて病理診断医の本来の仕事である「病理診断」、その準備やアフターサービスのための「自己研鑽」、そして「臨床へのフィードバック」に傾注できております。一つ一つの症例に真摯に向き合うことをモットーにしておりますが、診断依頼の中には難易度、大きさ、数が様々な症例が混在していますし、生検もあれば死後検査もあります。例を挙げると、犬の乳腺(だいたい5対あります)に複数の「しこり」が出来て手術で一括して摘出され病理検査に供された場合、診断医にはかなりの数のプレパラートが届きます(一つのプレパラートに複数の組織が含まれていることもあります)。犬の乳腺腫瘍の組織学的分類は現在30種類を超えますが、どのしこりがどの分類に該当するのか、それらが完全に摘出されているか、リンパ節や脈管への腫瘍転移はないのか等を、逐一丁寧に検査します。一方で、脂肪腫という、脂肪細胞由来の良性腫瘍が多くの動物種に発生しますが、この腫瘍の診断は迅速に完結します。はたまた他方では、皮膚疾患の患者さんから採取される皮膚パンチ生検標本の評価は多大なエネルギーと時間を要しますし、剖検検体から作製されたプレパラートは何十枚にも及び、あらゆる臓器を丁寧に検査しなければ答え(死因)を導き出せません。

このような苦労がある病理検査ですが、下世話な料金のお話をすると(弊社の料金体系を基準とします)、犬の10個の乳腺腫瘍の診断と、脂肪腫1個の診断が同じ料金ですし、剖検検体20臓器の診断は、脂肪腫5個の診断よりも安いのです。もし「正当」な料金を徴収しようとすれば、多くのお客様は他社に乗り換えてしまい、弊社の経営は非常に困難となります。歴史的にこういう体質の業界であり、サービスの供給側も受け手も病理診断の内容以外を重視するのです(例外も多々ありますが)。

愚痴が過ぎてしまいましたが、商品の仕様の変更に話を戻しますと、これまで10年近く診断医をしてきた経験から、病理医側が忖度しすぎて過剰サービスになっていると思われる点について、「用意周到に手を抜かせて」いただきたく存じます。診断書が「所見」、「診断」、「コメント(付記)」の3つのパートからなっていることは皆様ご存じのとおりですが、この中の「所見」について、本日発行分の診断書より以下のように変更いたします。

外科病理検査(生検、組織病理検査検査)について
・良性腫瘍(特に皮膚、乳腺の良性腫瘍)の所見を最小限といたします(多数提出の場合は基本的に所見を割愛いたします)。
・診断名とコメントは今まで通りで、所見で書けなかった分をコメントでフォローするようにします。
・弊社直接受付診断分の組織写真撮影枚数は「各病変1枚ずつ」を基本とし、臓器数が多い剖検検体は重要な病変にフォーカスいたします。
・その他、病変の重要性や依頼主の興味に照らして冗長と思われる記述をなるべく減らします。

死後検査について
・剖検所見、剖検写真、剖検診断については従来通りで変更はありません。
・組織検査において、死因や病態を把握するうえで重要な臓器・病変以外について、所見を割愛いたします。
・診断書への所見記載は割愛いたしますが、診断医の個人的なメモは保存しておきますので、診断書発行後の質問対応等への支障は最小限、あるいは、ありません。
・組織写真の撮影枚数は、上記外科病理検査と同様とします。

最後に、なぜ今回のアナウンスに至ったかについてですが、
・三井は本年、「博士号取得に取り掛かる=論文を書かなければならない」、「岡山理科大学獣医学部の獣医病理実習の準備等、実際の赴任前の準備が山積している」ためです。
・河村は「小さなお子さんの子育て」、「弊社の契約期間終了を前に進路開拓が必要」、「獣医学博士およびJCVP専門医として学術活動にも邁進する」ためです。
一言でいえば、我々は今年、例年になく多くの時間が必要であり、そのために誠意ある手抜きをさせていただきたいということです。

わがままとは十分承知ですが、常に「自分が主治医や飼主だったらこういう診断書が欲しいよなあ」という視点で診断書を作成しており、それは今後もしっかり継続いたしますので、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

長文になり失礼いたしました。

ノーバウンダリーズ動物病理
三井