ミニクイズ(1) 答え

写真や図がなくて味気なくてすみません。

A1.c.の「間質の線維化」
猫の慢性腎疾患(CKD)は、いまだに原因がよくわかっていません。中年を過ぎて尿量が増えて、よく水を飲んで、だんだん痩せてきて、血液や尿の検査で腎臓が悪いことが示され、動物病院で定期的に皮下点滴をしてもらっている猫ちゃんは案外多いのにもかかわらず、です。
参考にした論文の考察によれば、人間のCKDにおいても、腎機能の喪失は糸球体病変よりも尿細管・間質病変と強く相関していたそうです。腎臓の病気であればさぞかし糸球体に顕微鏡的に派手な変化が生じているに違いない、という先入観が打ち砕かれる思いです。
本研究のために集められたデータからは、患者猫さんの多くがタンパク尿を呈していたそうですが、顕微鏡的に糸球体病変は軽微であったそうです。通常、糸球体で濾過しきれなかったタンパクは尿細管でほぼ全て再吸収されますが、正常より多いタンパクが長期間尿細管に流れ続けると、尿細管上皮細胞が(疲れて?)変性・壊死し、炎症を経て、線維化につながるようです。尿細管は吸収・分泌を通じて身体全体の恒常性を保つ重要な役目を果たしていますので、それが徐々に失われるということは、ゆっくりと死へ近づくということになります。タンパク尿だけでは直ちに腎臓の機能は失われませんが、タンパク尿が尿細管を苦しめることで腎臓が徐々に機能を失っていく、という概念を知っておいて損はないと思います。よりよい予防法や治療法の模索は続いています。

A2.組織学的観点からすると、「肉芽腫性炎症」はマクロファージ、類上皮マクロファージ(活性化マクロファージ)、多核巨細胞が主体の慢性炎症で、炎症細胞は実質や結合組織内にシート状に、ランダムに分布しています。
これに対して「肉芽腫」は明瞭な腫瘤や結節を形成し、マクロファージや類上皮マクロファージが多数(ときに少数の多核巨細胞も)集まった中心部を、リンパ球・形質細胞を混じた豊富な線維結合組織が取り囲んでいます。肉芽腫の中心部が壊死している場合は、肉眼的にチーズのように見えることがあります。
肉眼的にはどちらも灰色~白色で充実性(引き締まった感触)ですが、び漫性肉芽腫性炎症が境界不明瞭であるのに対して、肉芽腫は球形~卵型で、より硬めです。
肉芽腫性炎症の原因は、内因性抗原(ケラチンなど)、外因性抗原(異物など)、原因不明(犬の肉芽腫性髄膜脳炎、犬の無菌性肉芽腫性皮下脂肪織炎など)です。肉芽腫は細菌感染(マイコバクテリウム属など)や真菌感染の場合に多く見られます。(参考:Pathologic basis of veterinary disease, 5th ed., p.122-126)
病理学には紛らわしい言葉が他にもありますので、今後ぼちぼち取り上げていく予定です。

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