誤診を防ごう!犬皮膚組織球腫の免疫染色を承ります

いつも大変お世話になっております。今回は弊社で新たに取り扱いを始めた免疫染色のご紹介です。

腫瘍は起源となる細胞によって分類、命名されます。分類は様々な手がかりを使って行いますが、この時に有用なのが顕微鏡で観察して腫瘍細胞の形態や増殖のパターンを調べることです。こうした基本的な分類により、腫瘍細胞は大きく「独立円形細胞腫瘍」、「上皮系腫瘍」、「間葉系腫瘍」に分けることができます。「独立円形細胞腫瘍」とは、その名が示す通り腫瘍細胞の1個1個が独立していて、特定の構造を作らないタイプの腫瘍で、動物の腫瘍ではリンパ腫、形質細胞腫、組織球系腫瘍、肥満細胞腫等が含まれます。この腫瘍のグループは、診断医にとって時に非常に厄介なことがあります。なぜならば、起源となる細胞が異なるのに(その時は分類は容易)、腫瘍化すると形態が互いに酷似することがあるからです。ですので、免疫染色(免疫組織化学)という手法を使って、腫瘍細胞が発現しているタンパク質のプロフィールを元にして詳細な分類を行う必要が時に生じます。なぜここまでしないといけないのでしょうか?それは、診断によって、その後の腫瘍細胞の振る舞いや治療方法が非常に大きく異なることがあるからです。かくいう私も独立円形細胞腫瘍に関連した「誤診」を今までに(幸い、数えるほどではありますが)したことがありまして、関係者の皆様にご迷惑をおかけしてまいりました。忸怩(じくじ)たる思いです。

前置きが長くなりましたが、このたび「犬皮膚組織球腫」という良性腫瘍を正しく診断するための抗体(E-カドヘリン)を購入し、提携会社((株)新組織科学研究所、東京都青梅市)において実施する体制が整いましたので、ご案内させていただきます。犬皮膚組織球腫は、皮膚に存在するランゲルハンス細胞という免疫応答に関わる細胞が起源の腫瘍で、わりと急速に増大しますが、摘出すれば治癒してしまう、いわば安心できる腫瘍です。厄介なのが、この犬皮膚組織球腫の腫瘍細胞が、肥満細胞腫などの他の独立円形細胞腫瘍(概して悪性)とうまく区別ができないことがあるのです。そういった際には、診断を客観的につけるためにこのE-カドヘリンによる免疫染色をお奨めいたします。臨床獣医師の先生のみならず、同業他社の診断医の先生方も、必要がありましたら弊社までメールかお電話でお問い合わせください。染色にかかる費用や日数等についてお伝えいたします。

E-cadherin IHC

上の写真は、抗E-カドヘリン抗体が反応している犬皮膚組織球腫の腫瘍細胞です。私はこの細胞を通常のHE染色で「肥満細胞腫ではないか?」と疑いましたが、その判断が間違っていたことになります。

c-KIT IHC

上の写真は同じ腫瘍細胞ですが、肥満細胞腫の検出に用いる抗c-KIT抗体を用いています。反応は見られず、肥満細胞腫は否定されました。

弊社ではE-カドヘリンとコロナウイルスの免疫染色を取り扱っておりますが、日本国内の提携会社や米国の獣医大学の免疫染色の仲介もしております(抗体の種類は腫瘍、感染症、その他を含めて300種類以上)。確定診断が必要な場合にはぜひご相談ください。

以上です。ご不明な点がございましたら、遠慮なくお尋ねください。

ノーバウンダリーズ動物病理
三井