Dr.KのJCVP学会(3月)参加報告

平素よりお世話になっております。レジデントの河村です。3月29~30日に岩手県盛岡市のいわて県民情報交流センターで行われた第5回日本獣医病理学専門家協会学術集会(第58回獣医病理学研修会)に参加してきましたので、少し遅くなりましたが、ご報告させていただきます。

学術集会に関しては、ポスター発表・スライドセミナー・チュートリアルセミナー・卒後教育セミナーと、多くの勉強の機会を得ることが出来ました。

ポスター発表では、「犬の多発性内分泌腫瘍の1例」という題名で、弊社にて死後検査を行った症例の報告をさせていただきました。「多発性内分泌腫瘍」というのは、読んで字のごとく、全身の内分泌組織に異なる腫瘍が多発する病気で、ヒトでは多くが遺伝性の病気であることが明らかになっています。犬を含めて動物では症例数が少ないこともあり、あまりまとまった知見は報告されていません。このように珍しい症例を発表することで、今後の病態解明の一歩に繋がればと思い報告させていただきました。

スライドセミナーでは「オートファジー」に関して、研究者として世界で活躍されておられる先生のご講演を拝聴させていただきました。「オートファジー」は日本人の研究者(大隅良典先生)がノーベル医学生理学賞を受賞されたことでも有名ですが、平たく言えば、細胞の中での掃除・リサイクルといったものです。ただし、講演の中ではそのような平たく言うのも憚られるぐらい緻密な出来事が細胞内で繰り広げられていることをお話されていました(私の頭・知識では全てを理解することは困難でした)。このような研究者の方々の研究に対する情熱は素晴らしいなと思いながらも、科学者の端くれとして、何かしらの成果を社会に還元しなければと身の引き締まる想いでした。

チュートリアルセミナーでは「犬と猫の消化管リンパ腫」を主題として、第一線で活躍されている臨床獣医師と病理診断医の先生方が非常にためになるご講演をして下さいました。普段から内視鏡生検の標本を診断する機会があり、その中でも苦慮する症例があるのですが、やはり病気というものは境界のもの(炎症から腫瘍へと変化するもの)や既存の分類に当てはまらないものがあり、病理検査だけではなく詳細な臨床検査(画像検査など)や遺伝子検査など、様々なツールを総動員させて診断していくべきなのだなと再認識いたしました。

卒後教育セミナーではウサギの眼球と魚類の病理に関しての講演がありました。普段から眼球の症例はたまに診断するのですが、普通の方法ではうまく固定されず、組織構造(特に網膜)が壊れてしまうのですが、眼球病理を専門とされている機関の組織はきれいに固定されていて素晴らしいなというのが第一印象でした。このセミナーでは検査の際に遭遇する偶発的な網膜異形成という疾患を再度精査してまとめたものを発表されていて、採取された組織をいかに大事に扱うか、普段からいかに小さな所見も見逃さずに心に留めておくかといった姿勢を学ばせていただきました。魚類のセミナーにおいては、組織の固定方法の検討からされていて、大変興味深い内容でした。大学院時代は組織固定の重要性を口酸っぱく教えていただきましたが、普段の業務内ではなかなかそこまで手が回らないのが現状です(病院様への啓蒙活動も含めて)ので、これから徐々に改善していかねばと思いました。また、魚類の病理は普段なかなか接することがなく、大変ワクワクするものでした。私の大学時代の恩師は魚類病理の勉強のためのサンプリングとして、(趣味も兼ねて)川釣りに勤しんでいたとの話を聞いたことがあります。少し気持ちに余裕ができたら、魚類の組織学や病理学を学んでいきたいと思います。

研修会に関しては、全部で25題の組織標本が提出され、各自で観察を行った所見を会場内で擦り合わせていくというスタイルなのですが、毎年のことながら熱気あふれる議論が飛び交っていました。日頃診ることがない珍しい症例や、馴染みのない感染性疾患の典型像など様々な標本がありましたが、個人的には「馬の多結節性肺線維症」は大学院時代に数例遭遇したこともあり、懐かしい気持ちになりました。非典型的な病変の病理組織は診る病理診断医によって様々な解釈がなされることがあり、毎年参加する度に、これこそが病理学の醍醐味だなと痛感させられます。

最後になりますが、学会全体を通して、やはり獣医病理学会は活気があり楽しい場だなと改めて感じました。少しずつではありますが知り合いも増え、特に同年代の先生方とは懇親会等で交流をすることが出来ました。現在の職場は今年いっぱいとなりますので、来年以降はまた違った心構えで参加していこうと思います。

ノーバウンダリーズ動物病理
河村芳朗