目的

動物の死因をできる限り正確に知ることは、獣医師個人のみでなく、獣医療全体の発展と進化(深化)に欠かせません。毎年のように先端的な検査項目や機器が開発されますが、獣医病理診断医が行う死後検査は今もなお、最も正確な、いわば「答え合わせ」のための検査であり続けています。生前に診断されていた疾患と、死をもたらした原因が異なること(合併症や偶発病変)がありますし、我が国で今まで存在が認識されていなかった疾患が発見されることもあります。また、世界で初めて遭遇する病気も、ないとは言い切れません。死後検査という獣医療行為には、亡くなった患者様が、残された多くの動物の命に貢献する機会を与えるという大切な使命があるのです。

流れと各項目の説明

死後検査は以下の図の流れで行います。以下に各項目の説明をしていますのでご参照ください。

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・ ご遺体の外部および内部を、獣医病理診断医が視覚、触覚、聴覚、嗅覚を駆使して詳しく検査します。
・ 検査する部位は基本的にあらゆる臓器・組織ですが、剖検を開始する前にご相談して決定します。
 できる限り多くの部位を調べることで、より多くのことが分かります。
・ ご遺体は、細心の注意を払って規定の順序に従って丁寧に切開します。
 決して「切り刻む」という表現は当てはまりません。尊厳と誠意をもって科学的に、獣医療の一環として検査いたします。
・ 組織病理検査のために、剖検した臓器の全部あるいは一部をホルマリン液に漬けておきます。
 こうして、それ以上の腐敗や自己融解を防ぎます。ホルマリンには強力な殺菌作用もあります。
・ 補助検査に備えて、特定の臓器の一部や消化管内容物などを冷蔵・冷凍状態で保管することもあります。

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組織病理検査

・ 剖検では把握しきれない、微細な細胞レベルの変化を観察する検査です。
 剖検と組織病理検査は、死後検査のいわば「車の両輪」です。
・ ホルマリン固定された臓器から、専門の技師が、顕微鏡で見ることができるような標本(プレパラートあるいは切片と呼ばれます)を作製します。切片の作製は、提携している検査センターにて行います。
・ 獣医病理診断医が切片を詳しく顕微鏡によって検査し、細胞の状態、病変の特徴、病気の原因や種類、腫瘍の悪性度、病原体のグループ分けなど、複雑な情報を読み取ります。

補助検査

剖検や組織病理検査は、肉眼や顕微鏡で「見る」ことが重要な検査です。
しかし、中には容易には見えない、あるいは構造があまりにも微細すぎて視覚でとらえられない病原体や異常物質もあります。
これらを検出するために、いくつかの方法があります。

・培養検査

細菌(バクテリア)や真菌(カビ)は種類が多岐にわたり、見ただけで素性を明らかにする(同定する)ことは困難です。侵された臓器の一部を培養し、病原体を増殖させて、原因菌を同定します。

・毒性検査

動物は、銅などの微量金属の蓄積や、薬剤などの化学物質の影響で病気になったり亡くなったりすることがあります。臓器の一部や消化管の内容物を特殊な機器で分析し、異常物質の存在や含有量を調べます。

・PCR検査

特定の遺伝子を増幅させる検査で、死後検査の場合は専ら、特定のウイルス性病原体を同定するために行われます。

・免疫検査、特殊染色

組織切片において、通常の染色では確認しがたい病原体や化学物質を、様々な手法で可視化します。免疫染色は、抗原と抗体が結びつく免疫反応を利用した染色法で、病原体の検出や腫瘍の診断等に役立ちます。特殊染色は化学反応を利用し、多種多様な物質や病原体を検出します。

 ※上記の「補助検査」は常に行うものではありません。またこれらの多くは、追加料金をいただいて、別の検査機関にて実施する検査ですので、検査のご希望について適宜ご相談させていただくことになります。
※補助検査の結果が最終診断を大きく左右したり、確定的な診断に結びついたりすることがしばしばあります。

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・ 上記のような段階を経て得られた様々な情報をもとに、患者様の病気や死因について科学的に吟味し、最終診断を行います。これらをまとめた「死後検査報告書」(獣医師法施行規則第11条第2項に基づく)を作成し、依頼主様にお送りします。
・ 所見や診断についてのご質問には、できる限り詳細にお答えいたしますが、あくまで第三者としての客観的な視点を大切にします。そうすることで、亡くなった患者様が残したメッセージを最も効果的に後世に伝えることができると考えています。

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動物死後検査価格表

注意事項(必ずお読みください)

・剖検は出張、持ち込み、送付のいずれかを選択できます。
※遠方への出張は物理的に不可能な場合がありますのでご了承ください。
・基本料金は動物の体重、体格によって異なります。
・中枢神経の精査のため開頭を行い、コスメティック手技により生前と違和感のない状態でご遺体をお返しすることができます。
・開頭しないご希望には応じますが、その分のお値引きはありませんのでご了承ください。
・鼻腔、関節(肘、股、膝)、眼球はご希望や必要性に応じて検査を行います。追加料金はありません。
・野生動物等、飼育者不明の動物の検査は相談に応じます。
・飼い主様用の簡潔な診断書(A4用紙1頁程度)をご希望の際はお知らせください(無料)。

基本料金(税抜)

以下の項目が含まれます

・剖検技術料
・組織病理検査料(約20臓器の切片作製と鏡検)
・死後検査報告書作成料
・肉眼・組織写真撮影料
・検査後コンサルテーション料
・組織特殊染色料※
・細菌/真菌培養料※
・薬剤費(消毒薬、ホルマリン等)
・消耗品料、医療廃棄料、その他雑費
※は症例ごとに診断医が判断して実施します。

カテゴリー1
ハムスター、モルモット、鳥、フェレット、兎、子猫等
カテゴリー2
成猫、体重20kg程度までの犬
カテゴリー3
体重20kg超の犬
カテゴリー4
その他(小型反芻獣等)
出張 60,000円 80,000円 100,000円 応相談
・縫合、清拭は依頼主様にてお願いいたします
・出張費用はメーター実走距離1km x 100円で換算いたします
持込 40,000円 60,000円 80,000円 応相談
・弊社隣接のコインパーキングをご利用ください
送付 50,000円 70,000円 90,000円 応相談
・冷蔵便をお使いください
・送料は発送元負担とします

追加料金・割引

・時間外料金(弊社営業時間外に開始した剖検に適用。弊社都合による場合は適用外) 15,000円
・縫合・清拭(所要時間約2時間) 15,000円
・リーガル剖検(剖検のビデオ撮影と、通常よりも詳細な写真撮影を含みます) 50,000円
・脊髄検査(脊髄全長を摘出します) 10,000円
・組織検査の「所見」割愛(組織診断名、コメントはあり) -10,000円 (検査料金が割引となる唯一の項目です)

上記をお読みいただき、弊社の死後検査サービスについてご理解いただけたことと存じます。実際にご依頼いただく際には、以下の3点について今一度ご確認いただければ幸いです。

1.ご依頼主は、死亡した動物を詳しく診察・治療してこられた主治医であること。

動物のご家族や飼育担当者様が死後検査を希望される場合でも、必ず主治医とよく相談の上、「死後検査承諾書」と「ご依頼書」に主治医に記入・署名していただき、弊社までFaxかメール添付(ご依頼書は当ホームページ上で記入と送信ができます)でお送りください。これらを確認させていただいた時点で初めて、弊社の死後検査の実務がスタートします。

2.弊社がご依頼をお受けするのは、死後検査によって「死因を追及」し、「命を後世につなぐ」ことを意図していることが明白な場合です。

治療をめぐるトラブルなど、個人的かつ感情的な理由での死後検査は、後々多方面に禍根を残す可能性が濃厚です。もちろんその中には、獣医療にとって重要な内容を含む事例もあると思われます。命を提供してくれた動物に対して皆が残念な気持ちを抱いてしまうような悲惨な状況を回避すべく、死後検査のお問い合わせの際や、実際の検査の前のディスカッションで、この点は厳正に判断させていただいております。その結果、検査をしないという結論に達した場合、検査料金はいただきません(状況に応じて交通費や時間外料金が発生する場合があります)。

3.興味のある部位だけの解剖検査はお断りいたします。

弊社は、ご遺体から最大限学ばせていただくことをモットーにしております。「死因」は、全身各臓器を精査し科学的根拠を積み上げてから初めて論じることができる、物理的、精神的、学問的にもタフな作業の結晶です。依頼主様がもし、「身体の限局的な部位に起こっている変化を知りたい」というご希望をお持ちの際は、死因を追及する作業の一環でない限りは、ご依頼をお断りすることがあります。その際は弊社の組織病理検査で代用していただくか、代替施設をご紹介させていただきます。

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