Dr.Kの日本獣医学会学術集会参加報告

随分と時間が空いてしまいましたが、9月6-8日に日本大学生物自然科学部にて開催された第159回日本獣医学会学術集会へ参加させていただきました。

初めて日本大学に足を踏み入れる機会に恵まれ、これでやっと日本にある私立獣医大学を全部見ることが出来ました。私の母校は北海道の広大な自然に囲まれていたこともあり、日本大学の近代的な校舎には驚かされました。(見渡す限りのトウモロコシ畑や放牧地も決して悪いものではありません!)

獣医病理学領域の大きな学会は年に2回(9月と3月)行われており、9月の学会は口頭発表による研究発表が主体となっています。獣医病理以外の他の分科会の発表も同時に行われているのですが、時間帯が重複していたり馴染みが薄かったりと、なかなか足を運べません。ただ抄録を見ると興味深い演題も多く見受けられましたので、いつかは思い切って獣医病理の会場から離れて他の分科会の会場にも足を運んでみたいと思います。

研究発表に関しては、何年も継続して同じテーマを掘り下げているものや、新たに取り組んでいるものなど様々ありましたが、印象的だったことはアミロイドの研究に関する発表が多いことでした。アミロイドとは、様々な前駆物質が異常に集積した不溶性蛋白質の総称で、これらが組織中に沈着し機能障害を来たすとアミロイド症と診断されます。古くから知られている疾患ですが、獣医病理の世界では昔から今に至るまで、研究されている先生が多いようです。特に近年では分析機器の発達により詳細なこと(アミノ酸配列やそのゲノム遺伝子など)まで分かるようになってきたので、今後も急速に発達していく分野なのかなと感じられました。

また、特別企画では「家畜感染症の病理—人体病理との交流」とのテーマで、豚の感染症を主体とした講演を聞かせていただきました。私個人として、普段は豚の病理診断を行う機会は非常に少ないので、大変興味深く学ばせていただきました。豚のウイルス感染症は非常に重要で、特に九州地方で発生した「豚流行性下痢」はニュースなどでも報道されていたように、養豚業界に大きな経済的損失を招いてしまいます。また、インフルエンザウイルスや二パウイルスといった人獣共通感染症の概要から最新の知見に対する講演もあり、このグローバルな現代社会では決して対岸の火事ではないと思いました。私の普段の業務時にはそのような考えに基づいて診断を行う機会は少ないですが、家畜の感染症を学ぶことで改めて獣医師の役割の大きさ、その範囲の広さを痛感しました。

5月に人間の病理学会に参加させていただきました。確かに規模や解析方法などは獣医の世界と比べると各段にそちらの方が大きいなと感じましたが、獣医領域の学会にもまだまだ学べることはたくさんあり、まだまだ研究の余地のある分野もたくさんあるのだなと考えさせられる学会でした。3月の学会は獣医病理分科会独自の学会で、私個人としても楽しみにしている「獣医病理研修会」も開催されます。白熱した議論が多々行われる場ですので、また皆様にいろいろなことをご報告させていただこうと考えています。

ノーバウンダリーズ動物病理
河村芳朗

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