寒い毎日が続きます。これからもっと寒くなるかと思うと、先が思いやられます。
今回は12月2日の投稿の続編として、興味深いと思った2013年米国獣医病理学会のポスター発表の概要を、さらにいくつかご紹介します。
<気になったポスター発表② Postmortem findings in two dogs trapped in a house fire. (火事に巻き込まれて死亡した2頭の犬の死後検査所見)>
・特徴的な所見として、煤(スス)が口腔、気管、肺に沈着していました
・遺体から採取した血液の一酸化炭素ヘモグロビンの濃度は、2頭の犬でそれぞれ55%と66%と高値でした(通常は3%)
・痛ましいことですが、死因をきっちりと調べるための手掛かりとして、このような情報の蓄積は欠かせません。獣医法医学が日本にもこれから徐々に入ってくると予想されますが、自然発生疾患だけでなく、動物の人為的な死や犯罪による死についても学ぶことが必要と痛感しました
<気になったポスター発表③ Canine adipose-derived mesenchymal stem cells – a useful therapeutic option for degenerative diseases of the central nervous system? (中枢神経系の変性性疾患の治療の選択肢として、犬の脂肪組織由来の間葉系幹細胞は有用か?)>
・Hannovar大学のin vivoの研究(脂肪組織由来の間葉系幹細胞を局所に移植)です
・結論として、移植した幹細胞は神経組織に分化しませんでした
・傷害された組織を幹細胞によって置き換えようという「幹細胞治療」は、未来の治療と言われています。そこに至るまでに、地道に試行錯誤が繰り返されていることがわかります。今回のようなネガティブデータは、実は成功したデータと同じように意味があります。期待したいものです
<気になったポスター発表④ Characterization of bone metastasis from canine transitional cell carcinoma. (犬の移行上皮癌の骨転移の特徴)>
・米国インディアナ州のPurdue大学は犬の移行上皮癌の研究が盛んですが、転移率が非常に高いこの腫瘍の、骨組織への転移に焦点を当てた研究です
・移行上皮癌は肺や局所リンパ節へ転移するのが一般的ですが、骨に転移することも以前から知られています
・19症例を解析したところ、椎骨への転移が33%、四肢の骨への転移が29%でした
・初期の転移巣が身体の深部に存在する場合には、CT撮影による検出が有効とのことでした
・移行上皮癌は骨転移巣が最初に(原発巣よりも先に)見つかることもありますので、臨床の先生方は是非知っておかれるとよいと思います
今回は以上です。また次回をお楽しみに。