講演のご報告(獣医内科学アカデミー)

いつもお世話になっております。

先週末は第20回日本獣医内科学アカデミーという比較的大きな学会にて、犬の胆囊疾患を病理学的見地から語らせていただく機会がありました。胆囊の病気として人では胆石症が有名ですが、犬では胆石はそれほど多くありません。それよりも、健康診断や他の目的で犬に腹部超音波検査をすると、細かい粒が超音波を反射してキラキラと見える「胆泥(たんでい)」や、まったく動かないゲル状に固まった粘液が胆囊内に溜まり続けてやがて破裂する「粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)」という病気が比較的多くなっています。今回はこれらを肉眼とか顕微鏡とか様々な染色をしたらどう見えるか、何が起こっていると推察されるのかなどを、私のここ6年程の研究成果と文献情報を交えて、活舌悪くお話ししました。これまでよくわかっていなかった「犬の慢性胆囊炎」、さらには、慢性胆囊炎の急性増悪(ぞうあく)版と解釈される「胆囊粘膜びらん・潰瘍および胆囊出血」についても解説しました。一部の先生には大変「刺さった」ようで、ご提言やご質問を多数いただき、今後の病理診断や研究のヒントがたくさん得られました。とても有意義な90分+アディショナルタイムでした。やはり、人と人の討論で物事の輝きや深みが増すのだなあと、学会の帰路つくづく思いました。

普段の診断を「丁寧に」行い、その結果を積み上げて未知の病態の理解・解明に役立てることができればと思いますので、今後とも検体ご提供含め、よろしくお願い申し上げます。

ノーバウンダリーズ動物病理 三井