自己紹介以来、初めてコメントさせて頂きます。
レジデントの河村芳朗です。
当社代表の華麗なスルーパスにより、5月12~14日に仙台国際センターにて開催された、第105回日本病理学会総会に参加してきました。
医療の学会に参加するのは初めての経験で、右も左も分からない状態でしたが、獣医の学会と進行の流れ等は変わらないので一安心でした。が、規模の大きさはさすがと言わざるを得なかったです。
今回の学会のテーマは「症例から学び直す病理学」ということでしたので、実際の症例を絡めた講演を聞けて、大きな興味を持って臨むことが出来ました。
複数のセッションが同時に行われていたこともあり、全ての話を聞くことは出来なかったのですが、事前に自分の興味のある分野をピックアップし、死後検査関連のセッションと、自分自身が大学院のときに扱っていた甲状腺腫瘍を含む、「初心者の為の内分泌病理学」というセミナーに主に参加しました。
剖検関連のセッションは、初日の19時30分~21時という、獣医の学会ではなかなかお目にかかれない時間に開催されていました。
医療の世界でも死後検査の件数は年々減少傾向にあり、獣医療でも危惧されていることと同様な問題に直面していることには、少し驚きでした。しかし、制度やネットワークの整備など、様々な手段を講じることでその問題に対処しようと奮闘されていました。
また、死亡時画像診断(AI; autopsy imaging)に関しても、非常に興味深い内容でした。AIというのは、死後検査の一環として、CTやMRIを用いて画像診断を行う検査です。言葉では聞いたことがあったのですが、実際の症例で詳しく解説をされると、その奥深さを考えさせられました。
利点
①病理解剖を行う際に、事前にAIで情報を得ることで、病理解剖の手技や方針の決定の手助けになる。
②病理解剖が出来ない症例にAIを行うことで、死因の特定につながる可能性がある。
問題点
①画像診断と言っても、AIにおける専門的な知識・読影法が必要である。
②現状では、AIのみでは死因の特定率は低い。
ということでした。やはり、AI→病理解剖ということを繰り返し、情報を蓄積していくことや人材を育成することが問題解決には重要なのだと思います。しかし、病理解剖を実施するには壁があり、理想的とは言い難いのが現状みたいです。
個人的には、獣医療の世界にもAIが導入され、一般的になることが望ましいとは思うのですが、そのために乗り越えるハードルはまだまだ高そうだなと感じました。まずは環境作りからコツコツと組み立てていくことが第一歩ですね。
「初心者の為の内分泌病理学」というセミナーでは、個人的には、あまり初心者のためではないのでは…?と思うぐらい詳しい内容でしたが、少しかじっていた甲斐もあって、すごく勉強になりました。
内分泌の腫瘍性疾患は、機能性の(大きな症状が現れる)ものであれば発見されることもあるとは思うのですが、非機能性のものや潜在的機能性の(あまり症状が現れない)ものなどは気付かれにくい、というのが一般論でしたが、昨今の画像解析技術の進歩などにより、発見率が大幅に上がってきているそうです。また、低侵襲的(あまり体に傷を付けない)な検査方の開発により、検査機会も徐々に多くなっているそうです。
この風潮は獣医療にも同じことが言えるので、おそらく今後、獣医療でも、内分泌の病理診断の重要性は上がるのではないかなと考えています。今後の個人的な研究テーマとしてもいろいろと考えていきたいと思います。
人生初の『杜の都・仙台』は、非常に有意義な時間でした。牛タンも美味しかったです。
もし今後も機会があれば、また様々な学会に参加して、異種格闘技のようなワクワク感をお伝えできればと思います。
ノーバウンダリーズ動物病理
河村芳朗