学会後の慌ただしさも多少なりとも落ち着いてきましたので、先月(9月13~15日)開催されました第160回日本獣医学会学術集会の参加レポートをご報告させていただきます。
学会会場は鹿児島大学郡元キャンパスでした。私は福岡県出身なのですが、今まで一回も鹿児島へ足を踏み入れたことがなく、人生34年目にしてやっと九州全県制覇となりました。関東で行われる学会も足を運びやすくいいのですが、地方での学会はちょっとした旅行気分を味わえます。
学会の初日と2日目の午後には研究成果の口頭発表があり、大学だけではなく、様々な研究施設や家畜保健衛生所などとの共同研究といった内容がたくさん出題されている印象がありました。特に狂犬病の研究発表が立て続けにあり、海外の研究施設との共同研究成果が上げられていることは素晴らしいことだと感じました。また、小動物の腫瘍分野ではどちらかというと遺伝子レベルの内容が多く、人間の病理と同様にこれからは遺伝子解析を含めた腫瘍診断というものも必要になる時代が来るのかなと考えさせられました。実験動物分野では日ごろからお世話になっている東京農工大学の方々のご発表がありましたが、非常にレベルの高い研究をされていて、何かの折に詳しくお話を伺いたいと思います(私の知識では発表時間内に理解することが困難でした)。大学院時代は学会での口頭発表が義務付けられていましたが、就職してからは口頭発表をするのが難しい状況になってしまっています。何とか頑張って研究活動を少しでも前進させ、学会での口頭発表を行いたいと思います。
2日目の午前中には病理分科会ワークショップ「家畜感染症の病理-人体病理との交流-」に参加しました。このワークショップは毎年異なるテーマで行われており、今回は鳥の感染症に関する講演がありました。鳥と人の共通感染症として有名なのは鳥インフルエンザですが、一昨年・昨年と日本で鳥インフルエンザ感染が養鶏場の鶏や野鳥から確認されたこともあり、5つの演題のうち3つは鳥インフルエンザに関するものでした。ヒトのインフルエンザの研究ではウイルス型とレセプターの関係から病変形成の機序に至るまで詳細な検索が行われており、鶏や野鳥の鳥インフルエンザの報告では病理学・疫学的な調査結果を拝見させていただきました。たまに鳥類の死後検査や組織検査を行う機会がありますが、やはり頭の片隅には常に鳥インフルエンザのことを置いて検査を行わなければと改めて考えさせられました。また、もちろん鳥インフルエンザ以外にも飼鳥や野鳥には様々な感染症がありますので、今回のワークショップからは本当にたくさんのことを学ばせていただきました。今後の鳥類の死後検査や組織検査に役立てていこうと思います。
最終日は夕方の便で帰る予定でしたので、午前中だけ学会会場に行きました。病理分科会は
2日目までで終わってしまいましたので、この日は「家禽疾病学分科会シンポジウム」というものに初めて参加してみました。ここでも鳥インフルエンザの講演が行われており、やはり昨今の鳥インフルエンザ事情は危機感を持って対応するべき問題として考えなければと感じました。ちなみにここでは国際獣疫事務局(OIE)、農林水産省、環境省、厚生労働省の先生が講演をされており、その役割分担の中での調査やジレンマなど、貴重なお話を聞くことが出来ました。なかなか普段の学会では他の分科会の講演を聞く機会がないので少し緊張していましたが、シンポジウムが終わる数分前に知り合いの先生が慌てて会場に入って来られて、講演をほとんど聞けずに終了するという状況を見ることができましたので、最後の最後で少し心休まりました。
学会では研究発表を聞いたり講演を聞いたりすることが大事なのですが、やはり普段なかなか会えない先生方や先輩方との交流の場というものも大事だなと思っています。初日の学会後に開催された交流会では、さすが鹿児島と言わんばかりの非常に美味しい肉(豚、牛、鶏)料理が食べられ、非常に美味しいお酒(特に焼酎)が飲めたので大満足でした。また、大学・大学院時代にお世話になった先生方や先輩方とは積る話をたくさんさせていただきましたが、昔から変わることのないやりとりや会話といったものは心安らぐものだなと感じました。ただ、今回の学会でふと気づいたことは、同期(偶然にも高校時代の同級生が獣医病理の世界にいます)や大学・大学院時代の後輩と遭遇する機会に恵まれることが増えてきた、これからは少しずつ下っ端から脱却して、引っ張っていくような年代になってきたのかなと考えさせられました。
今後もいろいろな学会に参加して、また皆様にいろいろなことをご報告させていただこうと考えています。
ノーバウンダリーズ動物病理
河村芳朗