いつもお世話になっております。
5月29,30日は仕事で岩手を訪れました。不在中はご迷惑をおかけいたしました。
29日(金)の夜7時半~9時まで、盛岡の岩手大学農学部獣医学科において、岩手小動物臨床研究会(IVC)のゲスト講演者として動物の死後検査についてお話をしました。たまたま同窓生が教官として同大学に勤務しているのでその縁で呼んでいただきましたが、岩手には以前から行きたいと思っていましたので、渡りに船でした。講演会では、死後検査とはどういった検査で、どのようなことがわかって、どのように活用できるのかということを実例を交えてお話ししました。開業されている臨床の先生方をはじめ、岩手大学の先生方や学生さんから質問が複数出て、有意義な1時間半となりました。
その中で、病態の解釈に悩んだ症例の剖検を以前お願いしたことがあるが(弊社以外に)、知りたかったメインの病変の原因について担当の病理医から「わかりません」と言われてがっかりした、というご意見がありました。少しお話を伺うと、長期化するといくら顕微鏡でつぶさに観察しても原因がわからないことが多いと教科書に明記してある猫の慢性腎疾患のことをおっしゃっていましたが、臨床医と病理医の間でディスカッションを尽くせば多少はフラストレーションが減るのにな、惜しいな、と感じました。病理検査は人が行う検査ですので、結果を最大限に引き出す「伸びしろ」があります。そのきっかけの多くは、臨床現場で何を疑問に感じたのかを赤裸々に教えていただくことです。それにこたえるために、病理医は奔走し、鍛えられ、臨床医へより多くのことをフィードバックできるようになっていきます。
懇親会を冷麺で締めた翌日は、宮古を経由して釜石に行きました。海岸の道路では3.11の爪痕を初めて目の当たりにしました。不自然に建造物がない原っぱがあちらこちらに見られ、仮設の住宅や商店街もありました。津波がここまで来たという表示から現在の海面を見下ろし、その高さに驚くこともしょっちゅうでした。私は前の会社に勤務しているときに地震に遭いましたが、あの後長く続いた苦労や不安を思い出しました。地震の犠牲者の方々には謹んで、あらためてお悔やみ申し上げます。
釜石では、横浜で勤務獣医師をしていた時の先輩(年は私の方が食っていますが)の動物病院を訪問し、元気な姿にホッとしました。その先生のご実家が食堂をやってらして、ご両親のカツ丼を食べるのを何年も楽しみにしていましたので、実現して感無量でした。カツ丼にざるそばと新鮮なウニもつけていただき、満腹になって帰路につきました。ちょうど入れ替えたばかりの往診車で快適な東京~岩手の出張でした。たまにホームを離れて世の中を見て刺激を受ける必要があるなあと強く感じた2日間でした。
以上です。
ノーバウンダリーズ動物病理
三井