「犬の胆嚢びらん/潰瘍と胆嚢血腫」の論文を発表しました

お世話になっております。

私の研究テーマの一つに犬の肝胆道疾患がありまして(他は、猫の肺疾患、獣医法医科学、伴侶動物の様々な病気の病理学的検査、節足動物の組織学、など)、そちらに関する論文が先月ようやく学術誌に受理され、発表されました。無料でお読みいただけます(が、英語です)。

https://www.mdpi.com/2076-2615/13/21/3335

今回は、犬の胆嚢に突如生じて非常に痛く、つらいと思われる「胆嚢出血(胆嚢血腫) hemocholecyst」の14症例について、臨床および病理学的情報をまとめ、いくつかの追加検査も行って病気のメカニズムを考察しました。犬は胆石を持っている確率がヒトに比べて格段に低いため、硬い内容物がゴロゴロ転がって粘膜を傷つけるわけでもないのに、なぜ粘膜が破綻して出血が起こるのだろう?と考えたことが出発点でした。前回発表した慢性胆嚢炎と同じく、胆嚢出血にも細菌感染が関与していそうですが、今回の研究でさらに、胆嚢を様々な傷害から守っている生体機構が破綻している可能性を示す所見を見出しました。

亡くなった動物から科学的・(獣)医学的情報を最大限引き出す「死後検査」とは別に、生きている動物たちを悩ませる様々な疾患の正体を突き止めるのも、我々獣医病理医の大切な仕事ですので、今後も研究を休まず続けてまいります。ご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

三井一鬼